日本養豚獣医師会(JASV) 代表理事 伊藤 貢 |
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この度、2024年7月19日に開催されました第22期JASV通常総会におきまして、代表理事に就任いたしました伊藤貢です。
JASVは、2004年に設立し、今年で20年という節目を迎えることができました。これもひとえに、これまで当協会を支えてくださった多くの関係者の皆様のお力添えのおかげであると、深く感謝申し上げます。
JASVは、豚の健康と安全な豚肉生産の増進を図ることにより、養豚生産者と消費者をつなぐ専門的かつ特異性のある養豚獣医業の確立と普及に寄与し、両者の幸福と豊かな社会の発展に貢献することを目的としています。この目的を達成するために設立以来、会員の教育、研究、技術の向上、並びに社会的地位の向上を図る事業に取り組んでまいりました。
現在、日本の養豚の最も重要な課題は豚熱と考えます。残念ながら清浄化への出口が見つからない状況であります。
更に懸念されるのは、アフリカ豚熱(ASF)への対応と考えます。2007年にアフリカからジョージアに再上陸したASFは、既に世界の68の国々に拡散しており、2019年から2020年にかけては世界の豚の20%以上をこの伝染病によって失い、このことは養豚業界のみならず、社会、経済にも大きな影響を及ぼしました。
2019年に韓国の北朝鮮国境近くで発生したASF感染は徐々に南下し、2023年12月には韓国の釜山でASF感染イノシシが見つかっており、ASFウイルスの日本への侵入の危険性が高まっています。水際防疫の強化とともに、侵入した場合の対応も進めていく必要があります。
JASVでは、ASFに関する会員相互の情報共有を促進し、早期発見に努めるとともに、農場防疫の更なる強化の指導を行い、行政や研究機関、並びに大学との連携を強化し、一致団結して対応を進めてまいりたいと考えております。
また、持続可能な養豚獣医療の確立には、次世代を担う人材の確保と教育が重要な課題であります。これまでも、獣医学生の研修や獣医系大学での講義、大学との共同研究を通じて、学生に養豚獣医療に触れる機会を提供し、関心を引き出す活動を行ってまいりました。当協会は「ヤングベット育成基金」を設立し、業界関係者の皆様からの寄付によりその財源をまかない、若手獣医師の教育や学生実習の費用補助などに活用しております。今後も、獣医系大学での講義を増やすと共に、就業者の教育にも力を注いでまいりたいと考えております。
さらに、薬剤耐性菌問題やアニマルウェルフェアへの対応も重要な課題として取り組んでいきたいと考えております。これまでJASVが築いてきた養豚獣医療の発展と社会貢献に満足することなく、更なる成長を目指して努力してまいります。引き続き、皆様のご指導とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。
2024年7月吉日
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