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【動衛研で最新の豚病研究成果を学ぶ
― 第2回豚病講習会を開催】
 
   
 

 つくば市の動物衛生研究所内において10月21日、JASVの主催による「第2回豚病講習会」が開催されました。

 これは(独)動物衛生研究所の協力を得て、JASV会員向けに企画されている講習会です。平成18年に行われた第1回に続く、2回目の開催となりました。参加費は無料で、正会員、一般会員、賛助会員を合わせて40名を超える出席があり、また動物衛生研究所内での開催ということもあって同所の先生方の参加も多数ありました。

 進行役は石川代表が務め、@芝原友幸先生「1.Actinobacillus pleuropneumoniae とActinobacillus porcitonsillarum による病変 2.離乳豚の接合菌における側頭骨骨髄炎 3.レプトスピラの免疫組織化学的検出」A鈴木孝子先生「PCV2関連疾病について―診断の難しさ―」B山根逸郎先生「PRRSが関わる呼吸器疾患による経済的な損失評価」C久保正法先生「PCV2とPRRSについて、最近の病鑑から」D下地善弘先生「大規模養豚に対応した省力型・高機能ワクチンの開発」の5演題が報告されました。

  初めの演者である芝原先生からは、富山県の屠場出荷豚の検査データより、Appが肺だけではなく肝臓やリンパ節にも膿瘍を作り、長期生存するという報告がされました。また、肺炎および肉芽腫性リンパ節炎が見られた出荷豚の病変部位から、今まで非病原性と言われていたActinobacillus porcitonsillarumが分離されたという1症例と、接合菌による骨髄炎が見られた珍しい1症例を報告し、またレプトスピラの免疫組織化学的検査手法についての研究成果について述べました。

  鈴木先生は11県24農場由来のステージ別血清サンプルを用いてサーコウイルスの血中DNA量を測定し、損耗率の高い農場と低い農場の検査値を比較したデータを示した上で、DNA量と損耗率が関係しているという傾向はみられるが、優位差ははっきりとはせず、農場診断には使えないとして、血中ウイルス量でのPCV2関連疾病の診断の難しさを報告しました。また、遺伝子型と病原性との関連を示唆して、特にヨーロッパタイプと言われる遺伝子型1型が全国に広がっているという事実を発表し、同時にPCRによる遺伝子型別の技術を紹介しました。

  午後の1題目であった山根先生からは、PRRSの発生による経済的な損失評価が報告されました。調査対象となった農場の写真や、数年分の事故率および増体データを示して、具体的で詳細な説明がありました。調査はJASVの正会員の協力を得て進められたものでもあり、農場による発生パターンの違いや経済損失のパターンの違いを考慮して経済損失の分析が進められました。その結果、PRRSによる経済損失はおおよそ283億と算出されました。また、臨床症状別の経済損失の算出方法が確立されたとして、その詳細が明らかにされました。

  久保先生は最近の病性鑑定の経験から、PCV2のワクチンが普及して以降、PRRSやグレーサー病の症例が増えてきたことを指摘。また、若い日齢での感染時期までに接種が間に合えば、PCV2ワクチンは非常に有効であるとして、PCV2ワクチン接種済みの症例について、4月から9月までの病性鑑定結果を発表し、その結果、PRRSと診断した症例が多いことを示しました。それに対し、フロアの会員から、「臨床現場でも同じように感じており、PCV2ワクチンを打ってもうまくいっていないところはPRRSやグレーサー病、浮腫病で苦戦している」という意見が出され、病性鑑定結果と臨床現場の実態がかみ合っているという事実が確認されました。

  最後の演者となった下地先生は、豚丹毒菌の病原因子の解析から、弱毒生ワクチン開発に至る過程を紹介し、マイコプラズマ・ハイオニューモニエに対するワクチンとしての応用とその有効性について報告しました。豚丹毒菌の菌体表面にマイコプラズマ・ハイオニューモニエの抗原を発現している豚丹毒菌YS-19株を利用したベクターワクチンが、鼻腔内噴霧により、そして針なし注射での接種により、細胞性免疫を誘導して豚マイコプラズマ肺炎の防御に至ったという研究成果を発表しました。同時にこれを応用した経口ベクターワクチンを紹介し、豚マイコプラズマ肺炎の防御に有効であったという報告がなされました。

  第1回に引き続き、今回も研究所側の最新情報を盛り込んだ各演題に対して、フロアとの様々な質問や意見が交わされました。PCV2診断のためのELISAが話題に上がった場面では、検査キットについてメーカー数社に意見を求める場面も見られ、JASV特有の、臨床獣医師と研究者とメーカーの担当者を交えた実際的な意見交換が行われました。最後に石川代表は、「今後もJASV会員向けの企画として、豚病講習会を継続して行っていきたい。」と語り、動物衛生研究所の先生方から直に研究成果を聞くことのできた貴重な講習会を締め括りました。

 
   
     
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