JASVの主要な事業として麻布大学の豚病臨床診断センター(PCC)協力のもと実施している病性鑑定事業ですが、2008年9月12日、麻布大学獣医学部において第2回豚病症例検討会を開催しました。この症例検討会は、JASV正会員が麻布大学PCCに送付した検体の病性鑑定結果を題材に、会員が発表する形式をとっています。フロアーからの活発な質問・意見も出され、参加人数は昨年より倍増し、学生を含め約150名と大盛況でした。麻布大学の代田欣二先生から病理所見の説明をしていただき、須永先生にはPCRの結果を報告していただきました。その概要は以下のとおりです。
症例1:石関先生提出(マルベリーハート病)
27日齢の離乳子豚が突然死した症例。肉眼所見は心臓の出血が顕著であった。組織所見では、心筋間および心外膜の出血が顕著で、マルベリーハート病と診断された。マルベリーハート病は、心臓以外肝臓や骨格筋にも病変が出るので、本病を疑う場合はこれらの材料も同時に送ると良い。
症例2:大井先生提出(PRRS偽陽性)
PRRS陰性農場で発生したPRRS偽陽性豚の症例。肺の免疫染色で少量の陽性が示されたが、この農場はPRRS陰性であったため、PCRにて精査を行った。その結果、PCRではPRRS陰性となった。再度陰性コントロールを置いて免疫染色を行ったところ、陰性コントロールもわずかに染色された。本症例によってPRRS免疫染色で偽陽性が出る可能性が明らかになったため、今後PCCでは常に陰性コントロールを置いてPRRSの免疫染色を実施していく方針を立てた。本症例の病理診断名は気管支肺炎となった。
症例3:大井先生提出(PRRS)
PCV2ワクチンを接種しても苦戦が続く農場の症例。離乳子豚が痩せて落ちていくことが続いたため、病性鑑定を実施した。組織所見では重度の肺炎像を示し(間質の肥厚)、免疫染色でPRRS陽性(PCV2陰性)を示した。また血液中のPCRでPRRSが強陽性であったことから、今回の発症はPRRSが主な原因と考えられる。PCV2のワクチンが発売されてから、確実にPCV2感染と診断される症例は減少しているが、PRRSやグレーサー病、浮腫病は相変わらず発生が多い。
症例4:呉先生提出(PCVAD)
PCV2による胃炎を伴うPCVAD(サーコウイルス関連疾病)。オガコ豚舎(125日齢)で事故率が上昇したことから病性鑑定を依頼した。組織学的検査では免疫染色でPRRSおよびPCV2ともに陽性。胃の粘膜固有層にもPCV2抗原が検出された。小腸でのローソニア感染を疑う所見も認められた。
症例5:志賀先生提出(肥育豚の結膜炎の集団発生例)
肥育豚(約80日齢)で結膜炎を主症状とする病気が発生し、病性鑑定を依頼した。主な臓器からPCV2抗原が検出され、組織所見ではPRRSによる髄膜炎が認められた。クラミジアによる結膜炎の報告があるが、その場合、骨に沿ってまぶたごとえぐり取るように採材した眼球を送付する必要がある。
症例6:志賀先生提出(発育遅延豚の非化膿性脳炎)
発育遅延豚を病性鑑定した結果、脳に封入体が確認されオーエスキー病を疑う髄膜炎の所見が得られた。しかし抗体検査では野外感染抗体は検出されなかった症例。考察としてワクチン株による病変の可能性もあることが示唆された。さらなる検討が必要。
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